ルソーの孤独


ヴォルテールとルソーは対立していた。


西洋哲学の10冊 (岩波ジュニア新書)

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ルソーが凄いのは、『社会契約論』や『人間不平等起源論』でなく、

もちろん、民主主義やフランス革命は、ルソーの考えが大きく牽引していて、

世界を変えた革命的思想に思うけど、

良いこと、凄いことは、ルソーじゃなくても、いつか誰か唱える人が出てきたんじゃないかと思うけど、

『告白』は、もっと人間的な部分で、ルソー自身にとっての大革命に思う。


自分の罪は語れても、

自分の恥ずかしい部分だけは、出せない。

ルソーの『告白』は自分の恥部を語り、

また、その恥部は自分じゃなく周りの無理解のせいなのだと、

そこでまた、恥部の上塗りをし、

告白しながらもまったく成長していかない自分を

曝け出し続ける。

私は以前ブログに自撮りを載せていたけど、

実物以上の、等身大でない自分を撮れないかにスポットを当て

本当の自分は撮っていなかった。

そして、褒められれば

(ん・・・・・画像が上手くいっただけで、これは自分なんだろうか)

と、

逆にヤメテクレーと叫びたくなるような、

矛盾した中に身を置いてた。

自分の汚く撮れた写真を人目に晒すことは、出来ない。

レンズには意志がないのだから、

綺麗に撮れても汚く撮れてもその両方が自分で

両方を曝け出して初めて『私』になるのだろうけど。

レンズは、嘘つかないとしても、

『言葉』は容易に嘘をつくことにもルソーは、気をつかう。

時間は常に流れ、細胞は常に変化し、

こんな風に文字にしていくそばから、考えも変わっていく。

文字という形にした時には、考えている過程でなく、すでに結果。

だから、鎧を着せてる。

自分を曝け出すことは、

というより

自分を外部に取り出すことは可能なのかな。

ルソーは歴史上の人物として、

私だって知ってるくらい偉い人だ。

よくわかんないけど、相当偉いんだと思う。

でも、その人生は迫害され孤独のうちに終える。

ゲーテも、フロイトも、みんなそう。


恥部を出すのは、相当の強い覚悟がなければ出来ないし、

ルソーがそうしなければ、生きていけなかったのは、

弱いんだか、強いんだか、なんだったんだろう。

人間の強さってなんだろう。

強いとか弱いって、なんだろう。

なんで、人は強くなりたがるのだろう。

みんなが一様に強くなろうとして、

世の中はこの先どうなっていくんだろう。

私は他人に対して強いと思うけど、

それはただ、弱いとこ隠してるだけで、自分じゃない自分を演じてるのかな。

どこまで鎧を脱げるんだろうか。

どれだけ鎧を身につけ、自分を護ろうとしているんだろうか。

自分を曝け出したら、社会的に迷惑だし、犯罪者なっちゃうし、

ルソーは、相当変わり者だと思うし、変人扱いされてたと思うし。

その孤独の中で人間を?いや、自分を追求してたのかな。

ルソーが、『告白』で人類に示したことは、

変態野郎の身勝手さだけかもしれないけど、

ルソーという冠がついた上に、それをしたのは

それこそ生半可な覚悟では出来ないことで、

恥をかく為の人生は、褒められる為の人生と違い、

その底知れぬ恐ろしさは他の誰にも真似出来ないことだったと

成したこと以上に為せない思いに深い感銘をうける。


水前寺清子の一本どっこの歌詞

♪ぼろは着てても こころの錦〜(略)〜人のやれない ことをやれ♪

子供の頃意味も考えずに歌ってたけど、すごい歌詞だなー。

プライドの高さは、自尊心の低さ。

本当の意味で自分が自分であるという自尊心を保つことは、プライドを下げることなんかな。

自己とはなんぞや・・・と、しばし迷路にはまりそうです。



D

ビルエバンスのピアノは、

天空から星がパラパラこぼれ落ちてくるような、そんな音がする。

一粒一粒の音の粒の透明感。この人の鍵盤だけ、なんで違う音がするんだろう。

ビルエバンスのジャズは、メロディーラインやリズム以前に『音の粒』に引き込まれる。

私の中でジャズは黒人が絶対なのに、

この人の壊れそうな感受性は、別物。

みんなが強くなりたい、強くなりたいと、

強いことが勝者の証のようなこの厳しい生存競争の社会にあって、

ビルエバンスのピアノは、

弱いことは恥ずかしいことじゃない。

負けることは悲しいことじゃない。

繊細な感受性をみんなが見失ってるだけなんだから。

と、

天空から涙の星をまきちらしてくれてるような感じがする。

頑張らなくても、そのままの幸せがある。

ジャズの世界では、白人であることで、逆に差別されたり、

繊細であるがゆえクスリに溺れ、命を縮めてしまったビルエバンス。

あちらの世界で、

ルソーにピアノ聴かせてあげてたらいいな。