日本人を考える


儒教を調べていて、気になって中国人のことを書いてあるものを読んでみた。


日本人を考える―司馬遼太郎対談集 (文春文庫 し 1-36)

日本人を考える―司馬遼太郎対談集 (文春文庫 し 1-36)

司馬遼太郎の対談集。もう40年前に書かれたものですけど、

時代は変わっても、人間の性質自体はそう変わらないでしょ(笑)

と、思ったら

中国で初めて罪人の人体解剖をした時のこと。

自分たちのもってる理念(陰陽五行説)と、実際開いてみた人の内臓が違っていた。

そうしたら「この罪人はまちがった内臓をもってる」といって、

目の前の現実より、自分のもってる理念で解剖図を作成した。

これぞ中華思想(笑)

現実がどうであるかは一切関係無し。理念第一主義。

そして一理念に忠実にこだわる。

韓国人から見ると日本人が不思議らしい。

韓国人は1つのことに忠誠を尽くしたり、憎んだりするが、

日本人は関心がコロコロ変わると。

そだね・・・

いまだにあの大戦は誰が始めたものかも明確になってないのに、

もうそれは過ぎたことで、過去をいつまでもグジュグジュ言ってるのはダサイという感覚になる。

過去にこだわることは日本では『かっこ悪いこと(潔くない)』なんだ。

『すべて水に流すのが潔し!』

だから問題が起きても時間かけて解決するより、嫌なことは早く忘れて先に進もうとしちゃうんだ・・・・・

日本の前へ進もうとする力は、明治維新をみても戦後をみても、すごい。

それと比べると中国は、全然前へ進ませようとしない。昔を尊んでいる。


司馬は日本人の祖先は騎馬民族江上波夫説)として、1つの輪郭が描けるという。

騎馬隊は、若者が先頭で、老人がしんがりとなって、システムそのものが草原を前へ前へと進軍していく。

個はそのシステムの中にいることで成立しているわけで、そこから外れたら草原に置き去りにされる。

途中、住民を虐殺しながら進んでいく。虐殺したいわけではなく、

システムからはみ出すわけにいかないので、ついていく。それが騎馬民族なのだと。

また、

日本の大会社に銃と大砲を持たせると、そのまま軍隊になります。と。

松下電器などはいい会社で社員が一生懸命働いている。

社の組織も実に機能的で、企業の目的に対してむだがない。

それを塀ごしにのぞいて、濃いフィルターのめがねでながめると、

いかなる国の軍隊よりも組織的制度が高くて、強そうですな〜。と。


陳舜臣

「戦後、中国人記者として日本に一番乗りした『大公報』の王芸生記者が帰国してリポートをまとめた。

終戦直後の日本訪問記ですね。

彼が一番驚いたのは、食糧事情が悪いため、みんな飯を食わんで青い顔をしている。

ところが、子供だけは頬っぺたが赤くて栄養満点だ。

これは大人が犠牲になって、子供に飯を食わしているのに相違ない。

日本は偉い国だぞ、と書いてます。

彼らは次代に託しているんだ。子供が親を敬う、というより、親が子供の犠牲になっている、と。

中国では、大人が青い顔をしていたら、子供はもっと青い顔をして、痩せこけている(笑)」

井沢元彦の書いてた『孝』は本当だった(笑)


日本は縦社会は出来ていて、横社会が無い。

縦社会は形が出来ているから安定社会。

だから会社という縦社会に入れるため、親は食べずとも子供に大学に行かせ、

会社に就職させることで安心したがる。

中国は横社会が出来ているので

頭がよければ大学に入れ、頭が悪ければコックにさせる。

考えてみればチャイナタウンは横社会の相互扶助システムですものね。

日本は主君のために命をささげるが、友のために犠牲は払わない。

友のために命を犠牲するのは、世界で中国人だけ。

私『走れメロス』は好きだけど、どうもあのセリフに違和感を感じてた。

あれは日本人の気質には無いからだったんだ。

友達同士で「俺を殴ってくれ!」「俺のことも殴ってくれ!」とか無いじゃん(笑)

日本は、国外追放したら、死刑になるとわかっていても日本から追い出してしまう。

だから日本に亡命してくる者は少ない。

そうか・・・・・

この本の中で、日本は江戸時代に鎖国をしいたけど、

日本人は元々鎖国体質があるのではないか。と言ってるけど、そうだそうだ。

知らない人が苦手。見知らぬ人との対等な会話が苦手。

知らない人間が入ってきて、安定をかき回されるのが苦手。

横社会というのは、上下が無いから、誰とでもフランクで、知らない人に対しても気兼ねがない。

ボランティアとか欧米式のパーティーは横社会ならではの感覚なんだ。

横の繋がりで社会を築いている。

社会の形式の違いだ。

日本では『横社会』なんて言葉自体聞かないもんなー。

縦社会が崩れるので横社会(儒教の侠)を取り入れなかったらしい。

徳川家康すごいな。

徳川家一軒を守る為にがっちり縦社会システム作ったなー。やっぱ天才。


ほんと私なんてぼけーっとしていて、この本読むまで気付かずにいたけど

ヨーロッパなんて、国がそれぞれ独立してバラバラになって、

アメリカだって合衆国という形になって、

でも中国だけは、あれだけ戦国の世が続いたのに、

『中国は1つ』という理念だけは変えなかった。

あれだけ土地の広い国なのにバラバラにはならなかった

中国が広いのは当たり前に思ってたけど、それだって、他と比べたら当たり前じゃない。

あれは中国の理念の象徴なんだ。


この本は40年前のものだけど、今読んでも普通に面白い。

今抱えてる問題と、40年前に抱えてる問題と一緒なんだもの。

廃棄物処理どうしましょうかとか。

ある程度、飽和状態にきているんだろうなー。