真空の時間

もういちど読む山川倫理/著者不明
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倫理の教科書。

この本とても気に入ってる。

教科書の域を出ないけど、教科書らしく誰にでもわかる言葉を選んで、

それでもって探求心をもてるような書き方をしている。

冒頭、

「仮面をかぶった人間関係」

現代人は「優しさ」を大切にするあまり、たがいに傷つくことを恐れ、本音を隠して、

うわべだけの会話に終始する傾向がある。

人が集まると、そこには他者にあわせようとする無言の心理的同調圧力がかかる。

一見、仲よさそうに話していても、たがいの心の内面を隠して周囲にあわせ、

仮面をかぶった人間関係を演じている場合もある。

また、ブログやホームページでの発言は、不特定多数の人の目にさらされるために、

つねに他者の反応に敏感になり、

いつもまわりの「空気」を読もうとするする他者への過剰な適応が起こりやすい。

しかし、他人から好かれる人を演じ、まわりに同調しようと気づかってばかりいては、

いつのまにか本当の「私」が見失われてしまう。

そのような他者への過剰な同調を強いられるストレスが、学校、会社、ネットにおける

他者へのいじめや攻撃となって、ゆがんだ形で発散されることもある。

(10頁より抜粋)

これって、人間が見えない社会に操られている。

でも、誰にでも納得出来る部分があるのではなかろうか。

ジッドじゃないけど

「誰に何を思われても、みんなの前で我を貫き通すぞ!」

という石原慎太郎派はそれほど多くないんじゃないかと。


同調圧力という言葉、

人が集まれば無意識のうちに共鳴しなければいけないような心理状態。

群集心理は怖い。

私は、このことをお経のように唱えるね。

人とは、本質的にそういうものを持ってること。

それは個を殺してでも、輪を優先する日本古来のDNAかもしれないけど、

人がAという意見をもつ

別の人はBという意見をもつ。

それを議論して、より前進的なCという意見を出す。

それが、日本人が乗り越えていけなければならない壁に思う。

オーディションに落ちたAと、これまたオーディションに落ちたBが融合し、

モーニング娘に発展を遂げたみたいなもん。

どんな意見も、どんな考えも抹殺してはいけない。

人は皆自由で、何を言ってもよい。(但しそこには責任が生じる)

誰の声も排除すべきではない。善も悪も。

ぶつかることを恐れては、その上に上がれない。

責任がのしかかることから逃げていては、その上に上がれない。

衝突して意見を真っ向否定されガクーンと落ちて傷つくこともあってしかるべし。

誰しもがそういう中で社会を作っていくことを、受け入れなければいけない。

中国13億の人間が智慧を出し合い、動き出したらすごいことになると思う。

でもあの国は政府がそんなことをさせないでしょう。

日本はそれが出来るはず。

でも今の日本は、人とぶつかることを恐れ、周りに追髄し、自分を偽り、国民こぞって心を病んでる状態。

で、自分が病んでそのはけ口に人を攻撃する悪循環、姑根性、これでは永遠にその枠から出られない。

でも、石原慎太郎でさえ言う

「他人との関りの中では自らに背いた嘘を含めて、

誰しも自分で自分を偽らざるを得ないことが多々あるはずです。

虚偽に包まれぬ真実などありはしないというのが、人間の真実なのかも知れません。」

虚偽に包まれぬ真実などありはしない・・・

なんと怖ろしい、そしてなんて悲しい人間の性でしょう。

だからすべてをさらけ出した、詩や音楽や絵といったものがいつの時代からもなくならないのでしょうね。

石原慎太郎は部屋でひとり仮面をかぶりそこに話しかけたり、動作をとったりしてるという

「他人が眺めれば気でも違ったかと思うかも知れないが、やってる当人はそんな時間の中で

完全に自分を忘れ離れてしまい、別の自分、といおうか別の位相の世界に立ち入れたような気がし、

わずかな間だろうと実に濃いカタルシスを感じます。

それで突然何かが得られるということではないが、その間だけとにかく自分を離れてしまって、

今までとは全く違う真空のような時間帯が在り得ます。

鏡の中の自分にむき出しで向かい合う時よりも、もっと自由に、鏡の中ではいえないようなことが

自分に話しかけられる。

あれは実に奇妙な、しかし他の何をもってしても代えがたいものです。」

真空の時間・・・・・

この人の、こういう透き通るような感性が好きなのだけど、

いったいこの人は、何をやっているのでしょう

そんなとこで浄化してないで、とっとと政治の世界から身を引き、文学に戻ってきなさい(T_T)

もう日本は無理です。と、言いたくもなる。

自分の力を遺憾なく発揮できる世界があるのに、

この人にしか書き残せないもの、書かなければならないものがあるのに、

どうにもならない暗黒の政治の世界にロマンを追い求めているのでしょうか。

まったく男はバカだ。そしてそんなとこが切なくもあり。

私にはこの偏見でモノを言う口の悪い爺さんを、

ただそれだけのつまらぬ男と切って捨てるわけにはいかない。そんなものを見てる。