鍬と宇宙船
私の一番苦しい時を救ってくれた秋山豊寛さん。
この人がいなかったら、立ち直るにもっともっと時間がかかったと思うし、
どっちの方に向いて立直ったかもわからない。
宇宙から帰還した後に、TBSを退社し、見知らぬ土地でお百姓を始めた秋山さん。
自然と共に生きる清々しさをTVでみて私の中で何かが変わった。
すぐに『鍬と宇宙船』という著書を買って読んだ。
土の匂いが立ち上ってくる本。
私もその気になってマイ鍬を買って庭に小さな小さな畑を作った。
鍬を振りながら汗をかいて手に豆を作って、色んなこと考えた。
生きることは、食べること。食べることは、身体を使うこと。
毎日いっぱい歩いて、畑を耕して、薄皮をはぐように1日1日心の傷が癒されていった。
痛みと共に喜びも感じる、そんな時間がすぐに楽しめるようになった。
傷がなければ持てなかった時間、今はその悩んだ時間さえとても愛おしく思い出される。
退職金で、福島に土地と家を買い、そこを終の棲家と考え、
地球のための農業に勤しんでいた秋山さんが、
原発事故で、大切に育ててきたものを捨て移住せざるおえなくなった。
「平和な老後をおびただしく破壊されました。秋に稲刈りをしたら、わら人形を作り、
原子力ムラの人たちの名前を張って、くぎを打ち付けたい思いです。」
今は京都に住まいを移され
「京都では陰陽道(おんみょうどう)を学ぶ。東京電力とそれに連なるものに呪いをかける。冗談ではない。真剣です」
と。本気というのはこういうことをいうんだと思う。
鍬は、枯れることのない人間のエネルギーが原動力。
時代は変わっても弥生時代から今まで変わらず使われ続けている。
その対極にあるのが、宇宙船であり、原子力であり。
科学技術は今、社会経済の枠に取り込まれてしまっている、
本当にこのままでいいのか。秋山さんは憂いていた。
そしてそのことが、2年前現実のものとなってしまった。
私たちが子供たちにつたえていかなければいけないことは何か。
大人自身も未だ模索中。
思い切らないと、難しくて、
思い切ることが、難しいんだろうな。
3.11あの日お星様になった幾つもの命に思いを寄せて...
今夜は眠りたいと思います。
震災後に出た『鍬と宇宙船』第2弾も読んでみる。