魚の群れ
ケーブルTVをつけたら、古いたけしの番組をやっていた。
見ていて不愉快になってすぐ他に回した。
人を小バカにして笑うことが、私はどうしても耐えられない。
たけしが嫌いなわけではない。
でも胸が痛くなってイヤなんだ。
ドッキリTVもイヤ。人を騙すってイヤ。
エイプリールフールも私は受け付けない。
考え方が堅い、ユーモアを解さない人間、と言われれば、はい、そうです!としか言えない。
過剰に捉えすぎてるのかもしれないけど、感情がイヤだと言ってるのだから、
私にはそこに乗っかることは無理なのだと思う。
人を悲しませる行為は私だってしている。偉そうなことは言えない。
でも、
TVがやって、そこで笑いをとってしまったら、
世の中がそのことを肯定していることになる。
冗談なら、人をバカにして笑ってもいいということを、TVが全国民に伝えた。
無抵抗な相手に、いくらでも叩いていいということを、ネットが伝えた。
たとえ相手がイジメの加害者であろうと、皆で叩いたらそれはイジメと何も変わらない。
TVやネットが良識だらけ、規制だらけになったら、
これまたとんでもない画一化された国になってしまう。
だから、メディアは自分たちの良心で、やりたいことをやっていい。
でも、私はそこにチャンネルは合わさない。
どんな社会になろうと、自分はこの感覚を麻痺させたくない。
昔、柳田国男は言った。
「日本人なんて所詮、魚の群れだ」と。
リーダーがいるわけでもないのに、皆で一つの方向に向かって泳いでいく。
そして、始末が悪いことに、自分がその中の魚だということに気付いていない。と。