日暮硯
この本を読んでいるわけではないのですけど、
今読んでいるものの中に『日暮硯』の話が出てきました。
これは
信州真田藩が洪水、地震、その他で財政難となり、どうにもならなくなった時、
家老の恩田木工(もく)のとった財政立て直し策です。
恩田は最初は、この役目を辞退したが許されず、
「それならば・・・」と、
自分のやり方に他の者が異議を唱えたら出来ることも出来なくなるので、全権委任の上、
任期を5年と切り、失政とあらば切腹を覚悟で。
と、その任を引き受けた。
そして家に帰ると、
今後は一汁一飯のみとし、衣服は新調せず、妻は離婚し、子供は勘当し、親類は義絶し、
雇人は全部解雇する旨を申し渡した。
その理由として、
これから自分は嘘偽り一切無く、身を正していくが、身内の者はそうもいかないであろう。
身内がそれなら・・・と、自分も疑われる。信頼なくして改革は出来ない。旨を伝える。
周囲の者は、それならば、自分たちもそのとおりするので・・・と懇願し、そのままでいることを許される。
ここからは、現代訳が無いので私は全部を理解しているわけではないけど、ちょっと面白い。
海外では、理解不能のことらしい。
まず、役人には、今まで遅れていたお給料は、これからはきちんと払うこととし、
そして今までに不正(賄賂)のあった者も不問とし、能力を用いる。
今まで年貢に未納があった者も許す。
年貢の催促はしない。
家業を疎(おろそ)かにする者は天下の大罪人なり。
家業に精を出し、余力あったら、浄瑠璃でも三味線でも博打でも好きに楽しみなさい。
でも博打は天下のご法度なので、商売としてはいけない。
災害やなにかの場合には、考慮もする。
自分は嘘偽りなく、言ったことは守る、それで切腹することになるかどうかは、皆の者次第である。
だから年貢を納める者も取り立てる者も首尾よくよろしく♪
みたいな感じ。
これで結果、5年で財政再建が出来たかというと・・・
出来なかった。
多分、出来ないことは恩田自身承知の上のことだったのではないか。
切腹と引き替えに、
人間が信頼の上で、本来出来ることをする。
それ以外、恩田のするべきことはなかったように思う。
世の中、がんばれば、なんでも達成出来るわけでもない。
給料を下げたり、遅延したり、あくどい年貢の取立てなど、無理に無理を重ねれば、
どこかに歪みが生じ、逆に悪がはびこることになる。
上からの単なる押付けの政策でなく、
まず、上の者と談判し、したい政治が出来るようにし、
自分が身を正し、
皆の不安を取り除き、
そして財政立て直しに取り掛かる。
5年後、恩田は亡くなったらしい。
節食と過労がたたったのか、わからないが。
現代訳で読んでみたい♪
今の政治家のほとんどは、日暮硯は読んでいると思う。