文章読本

文章読本 (中公文庫)/谷崎 潤一郎
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この表紙だけで何より美しい。と感じてしまう。

今時のファッションを見ても美しいと思う。

それと同じように、古い物が美しく思えて仕方ない。

どっちがどうじゃなく・・・

美しいものは、美しい・・・としか言えないのだけど。

この本は持ってない。

ちくま日本文学『谷崎潤一郎』を読んでいたら、『文章読本』の一部50頁ほどが載っていて

読んでいくうちに、引き込まれてしまった。

文章読本』とは文章の読み方、書き方の本です。

偶然にも先日読んだ斉藤孝の『読書力』と、内容がだいぶ被るところがあって、

(被ると言っても、斉藤は谷崎が言ってることを発展向上させているのですが)

私は斉藤を読んだ時は、心から納得するけど何故か感情の上で反発したくなると言った。

でも谷崎を読んだら、同じようなことを言っているのに、

その口調の美しさに、心打たれてしまった。

「こうした方がいいですよ」と言っているのに説教くささはなく、全面に優しさが漂っている。

それは多分、谷崎が持っている『文章に対しての愛』だと思う。

物語の主人公を愛すると言うより、読者を愛すると言うより、

文章を愛しているから、これほど丁寧に扱えるのかと思う。

谷崎の小説の美しさは、マゾ性とかエロとか残虐性とか幻想とか言うけれど

この人は、それ以前に文章をとても愛している。

作家が文章を愛するのは当たり前なんだけど、その愛し方が私は限りなく好きだ。

見たら、この『文章読本』は昭和9年に書かれている。

今から・・・

えーーーーー80年近く前???!!!

いやいや、「昨日書きました」と言っても普通に通じてしまうと思う。

なんでこんなにわかりやすく書いてくれているかと言うと、

わかって欲しいからだ。

ひとりでも多くの人に読んでもらい、日本語の文章とはこういうものなのですよ。

と、伝えたいからに思う。

古典、漢文、英文を引用し(訳あり)幅広く書いているのだけど、そこに難解さは無い。

現代にこの文章読本が実践で役立つかは私にはわからない。

でも文章とは、こんなに美しく優しいものだと感じる。

そうだ

感じるんだ・・・

知識となるよりもっと心に届くもの。

私は、本の中に『美しさ』を求めているのだと思う。

本とは脳でなく心で感じるもの・・・

文章読本は、その後

川端康成三島由紀夫吉行淳之介丸谷才一井上ひさし林真理子、も書いている。

大作家が書きたがる本なのかな(笑)

他の人のも読んでみたいな音譜