吉本隆明*

「自分の死というものは、僕は今度それに近い目にあったからわかるけど、

ちっとも苦しくなかったし、なんでもないから。

そのかわり、臨死体験もないし味もそっけもないものだ、

ただ意識がなくなっていなくなっちゃうというだけと思うので、なおさらそういうことを感じます。

自分の主観だけでいえば、歳をとるとだんだん人間は死がひとりでに怖くなくなっていきます

死とは、他人の死の印象によって怖いという意識をつくってしまうだけのことで

死については考えすぎる必要もないというのが相当確実な結論。

ただ、他人の死はそれなりにたいへんだなと考えたほうがいい。それは注意すべきことと思っています。」

死は怖くないよ。って言ってる。吉本隆明の優しさですね。

というか、娘に伝えたかったのかな。

娘は父親が死の淵にたってしまったことで、死に対しリアルな怖れを抱いた。

この言葉でその不安を取り除いてあげたかったのかも。

宗教を持ってる人たちは、死後に天国という観念がある。

でも日本人にはそれがない。

それは生きていく上で、大きなハンディキャップだと思う。

なので死は怖くなかったよ。と言ってくれたこの言葉は何より心強い。私はこの言葉に縋ろう。

吉本隆明に対しては、誰でも好き嫌いあると思うけど、それだけで語れるだけの人ではない。

こういう人が亡くなったことは、日本の大きな損失に思う。